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BEAF
多次元
基本関数 ハイパー演算子
急増加関数 \(f_{\varepsilon_0}(n)\)

BEAF (Bowers Exploding Array Function) は、Jonathan Bowers が考案した巨大数の記法であり、チェーン表記よりもはるかに強い。同じく Bowers が考案した配列表記拡張配列表記の上位互換である[1]。その簡単さと増加速度から、巨大数研究の中で有名になった。ただし、テトレーション配列よりも上の表記については、Bowers 自身による厳密な定義が与えられておらず、未完成である。Bowers 自身も未完成な部分については「神のみぞ知る」と述べて未完成であることを認めている[1]

以下に(完成した場合に想定される)BEAFの定義の概要を記すが、いきなり定義を理解するのは難しいため、BEAF入門でBEAFの考え方が少しずつ解説されている。

定義[]

  • 基数」 (b) は、配列の1番目の要素である。
  • プライム」 (p) は、配列の2番目の要素である。
  • パイロット」は、プライムの次の最初の1ではない要素である。パイロットは3番目以降の要素となる。
  • 副操縦士」は、パイロットの1つ前の要素である。パイロットが行の中で1番目の要素であれば、副操縦士は存在しない。
  • 構造」は配列の一部で、配列よりも低次元なグループによって構成されるものである。構造は、要素 (\(X^0\) と書く)、 (\(X^1\) と書く)、平面 (\(X^2\))、3次元の領域 (\(X^3\))、4次元のフルーン (\(X^4\))、さらに高次元の構造 (\(X^5\), \(X^6\) 等)、そして \(X\uparrow\uparrow 3\) のようなテトレーション構造、といった可能性がある。さらに、そこから先はペンテーション構造、ヘキセーション構造, ..., 膨張構造, ... と続く。
  • 「前の要素」は、パイロットと同じ行にあり、パイロットよりも前にある要素である。「前の行」は、パイロットと同じ平面にあり、パイロットよりも前にある行である。「前の平面」は、パイロットと同じ領域にあり、パイロットよりも前にある平面である。同様に、定義を続けることができる。これらは「前の構造」と呼ばれる。
  • 構造 \(S\) の「プライムブロック」は、構造を表記する記号の \(X\) をすべて \(p\) に置き換えたものである。例えば、もし \(S = X^3\) であれば、プライムブロックは \(p^3\)、すなわち一片の長さが \(p\) の立方体となる。\(X^X\) 構造のプライムブロックは \(p^p\)、すなわち一片が \(p\) の \(p\)次元超立方体となる。
  • 飛行機」は、パイロットと、すべての前の要素と、すべての前の構造のプライムブロックを含んだものである。
  • 乗客」は、飛行機の中のパイロットと副操縦士以外の要素である。
  • 配列 A の値は \(v(A)\) と表記する。

ルール[]

  1. プライムルール: もし \(p = 1\) であれば、 \(v(A) = b\) とする。
  2. 初期ルール: もしパイロットがなければ、 \(v(A) = b^p\) とする。
  3. 破滅ルール: 1 も 2 もあてはまらない場合には、次のようにする。
    1. パイロットの値を 1 減らす。
    2. 副操縦士の値を元の配列のプライムを1減らしたものに置き換える。
    3. すべての乗客を b にする。
    4. 配列のそれ以外の要素は変化しない。

配列の種類[]

線形配列[]

主要記事: 配列表記

線形配列'は、最も小さく簡単な配列である。線形配列は1次元の数字の並びで、例えば \(\lbrace 5,8,7,2,4 \rbrace\) のようなものである。BEAF の中では最小であるが、4変数以上の線形配列は、チェーン表記よりもはるかに急速に増加をし(バードの証明として知られる定理)、多変数アッカーマン関数と同程度となる。線形配列の中の位置は、「4番目の要素」のように1つの数字であらわされる。

多次元配列[]

主要記事: 拡張配列表記

多次元配列は、2次元以上の配列によって表記されるものである。1行で表記するために、カンマのかわりに多次元の境界を括弧の中に数字を入れて表記する。(1)は、次の数字が次の行に変わることを意味し、(2)は次の平面へ、(3)は次の領域(3次元空間)へ、(4)は次のフルーン(4次元空間)へ、移ることを意味する。以下、同様にして、(n)は次のn次元空間に移ることを意味する。たとえば、 \(\lbrace3,3,3 (1) 3,3,3 (1) 3,3,3\rbrace\) は、3行3列の正方形に3が並んでいる配列を表す。このような多次元の構造は、冪乗配列とも言う。

テトレーション配列[]

テトレーション配列は、テトレーション空間上で表記される。テトレーション空間は、超次元空間、トリメンション空間、クオドラメンション空間、等によって構成される。オリジナルの定義で完成しているのはテトレーション配列までである。

超次元配列は、多次元配列だけでなく、多次元グループ、グループの多次元空間、グループのグループ、ギャング(グループの次のレベルの構造)、等を含んでいる。

超次元配列の中の位置は多次元配列を使って表記され、トリメンション配列の中の位置は超次元配列によって表現され、といったようになる。

ペンテーション配列[]

ペンテーション配列では、冪乗がグループ化されて、 \(X\uparrow\lbrace X\uparrow X\uparrow X\rbrace\uparrow\lbrace X\uparrow X\uparrow X\rbrace\uparrow\lbrace\lbrace X\uparrow X\uparrow X\rbrace\uparrow\lbrace X\uparrow X\uparrow X\rbrace\uparrow\lbrace X\uparrow X\uparrow X\rbrace\rbrace\) のようになり、この式は X が 3 であると評価したときの \((X \uparrow 2+2X+1)\uparrow\uparrow X\) である。ここで、{ } は通常の括弧のように計算するのではなく、冪乗をテトレーションのブロックに分けるために使われている。そのため、プライムの要素が変われば、それぞれのブロックの {X^...^X} の中にある X の数が、プライムの要素と同じ値に変化する。オリジナルの定義ではペンテーション配列がうまく定式化されておらず、ここ以降はBowersの意図を汲んで推測されたものである。

より大きいレギオンを使わない配列[]

ヘキセーション配列、ヘプテーション配列、膨張配列、 乗算膨張配列、冪乗膨張配列、爆発配列、乗算爆発配列、爆轟配列、等々の、より大きい配列がある。さらに大きくしていくと、空間そのものが配列表記(線形配列、多次元配列、テトレーション配列、等々)によってでないと書けないような大きさになる。

Jonathan Bowers は、これらの配列について「どうやってこれらの配列を取り扱えばいいのか?神のみぞ知る。とにかく大きな配列で、それを解いた時には、完全に言葉にできないほどの大きさの数になるだろう」とコメントしている。

レギオン[]

レギオンについて議論する前に、まずは配列次元演算子を定義する必要がある。a配列のbは、a & b と書かれ、a個のbで {b, b, b, ...} と定義される。a が指数あるいは配列であれば、その配列の次元を示すこととなる。たとえば、 \(3^2 \& 3 = \lbrace 3, 3, 3 (1) 3, 3, 3 (1) 3, 3, 3 \rbrace\) は 3×3 \( = 3^2\) 配列の 3 である。

Bowers は、BEAF の定義をレギオン配列 (legion arrays) を使ってさらに拡張した。彼の古い表記では、爆発配列 (exploded arrays) という用語を使っている。ここで、legion は英語の発音では region のように「リージョン」に近く発音されるが、legion にはローマ軍団の意味があり、古代ラテン語のレギオを語源としていることから、ローマ字読みでレギオンと訳してみた。\(\lbrace a, b, c, \cdots / 2\rbrace\) という配列では、2という数字は2番目のレギオンにあると言う。この場合、1番目のレギオンでは通常の計算をするが、初期ルールを \(v(A) = b \& b \& b \& b \& \cdots b \& b \& b \& b \) を p 回繰り返したものとして、左から右へ向かって解く。たとえば、\(\lbrace 3, 3 / 2\rbrace = 3\&3\&3 = \lbrace3, 3, 3\rbrace \& 3\) となり、これはトリトリ個の要素からなるペンテーション配列である。この数にはトリアクルスという名前がついている。

一般に \(\{b, p / x\}\) において、\(x\) はパイロットである。レギオンのプライムブロックは \(b \& b \& ... \& b \& b\) を \(p\) 回繰り返したものである。よって、一般的にこのようになる。

\[\lbrace b, p / x + 1\rbrace = \lbrace b \& b \& b \cdots b \& b \& b / x\rbrace\]

たとえば、

\[\lbrace 3,3 / 3\rbrace = \lbrace 3 \& 3 \& 3 / 2\rbrace\]

ここで、最初のレギオンは \(3 \uparrow\uparrow\uparrow 3\) 配列の3を含んでいて、次に2番目のレベルのレギオン配列を解くことになる。\(\lbrace 3,3/3 \rbrace\) は \(\lbrace トリアクルス/2 \rbrace\)、つまり \(\lbrace 3\&3\&3/2 \rbrace\) となる。

2番目のレギオンの中に、\(\{3, 3 / 3, 3\}\) のように複数の配列を書くことができる。それぞれのレギオンは多次元配列、テトレーション配列、ペンテーション配列、膨張配列、等となることができる。配列は \(\lbrace 3, 4 / 5, 6 / 7, 8\rbrace\) のように2つ以上のレギオンを持つことができる。レギオンの構造は多次元とすることができ、その場合は (/n) をn次元レギオンの境界とする。たとえば、 \(\lbrace 3, 4 (/6, 2) 9, 4\rbrace\) はテトレーションレギオン配列である。

レギオン配列では 1 がデフォルトである。すなわち、 \(\lbrace A / 1\rbrace = \lbrace A \rbrace \) となる。

多重レギオンとレギオン記号配列[]

これをさらに進めると、「レギオン配列次元演算子」の記号 && を説明することになる。これは、通常の配列次元演算子と同様に働くが、レギオン配列に対して作用する。たとえば、 3 && 3 = {3,3 (/1) 2} = {3 & 3 & 3 / 3 & 3 & 3 / 3 & 3 & 3} (ここで、 / は通常の配列のカンマと同様に働く) となる。そして、 Bowers は2重レギオン記号 (例: {3,3 // 2}) を、レギオンの「配列次元演算子」記号の繰り返しとして定義した。すなわち、 \(\lbrace a,b // 2\rbrace = a\&\&a\&\&a\cdots a\&\&a\&\&a\) (b 回の繰り返し) となる。

2重レギオン配列は、もちろん、多次元配列、テトレーション配列となっていき、やがて2重レギオン配列そのものに到達する。そこで、2重レギオン配列記号を繰り返したものを3重レギオン配列と定義して、3重レギオン配列記号を繰り返したものを4重レギオン配列と定義して、といった定義をすることは理にかなっている。

ここから先は、新しい構造を定義する必要がある。すなわち、\(\lbrace a,b (1)/ 2\rbrace = \lbrace a,b ///.../// 2\rbrace\) (b 個の \(/\)) (レギオン記号の次の行のレギオン記号は、前の行のレギオン記号のプライムブロックを持つ) となる。レギオン記号は配列そのものともなり得て、 \(\lbrace a,b ///(2)/(3)//(4)/(1,2)/ 2\rbrace\) といったような構造となる。

これをさらに拡張するために、 Bowers はこのような新しい表記を導入した。 \[\lbrace L,1\rbrace_{a,b} = \lbrace a,b / 2\rbrace, \lbrace L,2\rbrace_{a,b} = \lbrace a,b // 2\rbrace, \lbrace L,X\rbrace_{a,b} = \lbrace a,b (1)/ 2\rbrace\] これは、レギオン記号配列 (legiattic array または "legion marks" array) のごく一部の例であり、\(\lbrace L,X \uparrow\uparrow\uparrow X \rbrace_{a,b}\)、すなわちペンテーションレギオン記号配列のようなものもできる。さらに、 \(\lbrace L,L \rbrace_{a,b}\)、すなわちレギオン記号配列のレギオン (legion legiattic array)、すなわちレギオン記号へのレギオン記号といったものもできるであろう。

このように定義をしていくと、{L,3,2}a,b, {L,L,L}a,b, {L,L (1) 2}a,b といったようなものが定義出来る。そこで、レギオン記号配列次元演算子 @ を、このように定義することが適当である。 a @ b = {L,L,L,...,L,L,L}a,b (b 個の L) a2 @ b = {L,L,L,...,L,L,L(1)L,L,L,...,L,L,L(1)...(1)L,L,L,...,L,L,L(1)L,L,L,...,L,L,L}a,b 例えば、 33 @ 3 = {L,L,L(1)L,L,L(1)L,L,L(2)L,L,L(1)L,L,L(1)L,L,L(2)L,L,L(1)L,L,L(1)L,L,L}3,3 となる。

ルギオン、ラギオン、リギオン、そしてその先[]

まず、 Bowers は \ をルギオン記号として {a,b \ 2} = a @ a @ a ... a @ a @ a (b 個の a) と定義した。レギオンと同様の拡張をルギオンに対してすることができて、 {3,4,5 (\1,2) 7,8 (\3) 2} (多次元ルギオン配列), {5,5,5 \\\\\\ 3} (6重ルギオン配列) といったようになる。ルギオン空間は L2 空間となるため、 {L2,X}a,b = {a,b (1)\ 2} となる。さらに、レギオン記号配列と同様に、ルギオン記号配列を定義することは簡単である。ルギオン配列次元演算子は % という記号で、ルギオン配列次元演算子を繰り返すとラギオンになる。すなわち、 {a,b | 2} = a % a % a ... a % a % a (b 個の a) となる。

ラギオン配列次元演算子を繰り返すとリギオンになる。 {a,b - 2} = a # a # a ... a # a # a (b a's)

ここで、レギオン空間は L1、ルギオン空間は L2、ラギオン空間は L3、リギオン空間は L4 と書くことに注意すると、当然その先は L5空間、L6空間、…と続き、さらに LX, L(X+1), L(X+2), L(2X), L(X^^^X), LL, LLL といったような構造が定義される。

Lそのものが、配列構造を取ることもできる。例えば、 {LLL(1)LLL(2)LLL(1)LLL,1}3,3} であるとか {(1)L,1}3,3 = {LLL,1}3,3 といった配列である。

L 配列(レギオン記号配列とは違う)は、多次元配列、超次元配列、トリメンション配列、テトレーション配列、…、レギオン記号配列、ルギオン記号配列、ラギオン記号配列、リギオン記号配列、L100記号配列、等となり得る。

解析[]

BEAF は完全には定義されておらず、その解析はほぼ全て「もしBEAFが何らかの意味で適切に定義されたならば」という曖昧な前提を持つものである。以下の記述でもその前提を暗黙に課す。実際には定義されていないため、数学的な意味のある比較ではないことに注意が必要である。

アッカーマン関数矢印表記チェーン表記ハイパーE表記を簡単に超える。急増加関数のページでは、さらに大きな急増加関数の関数の多くが、BEAFと大きさが比較されていた(が、現在の日本語版ページでは大部分が削除されている)。BEAFの限界となる順序数は、まだ探索中である。一時は \(\varphi(2, 0, 0)\) (フェファーマン・シュッテの順序数 よりも少し上) 程度であると信じられていた。今では、少なくとも \(\vartheta(\Omega^\Omega\omega)\) (大ヴェブレン順序数 よりも上) のレベルであると信じられていて、さらにバードの配列表記と同様に、はるか バッハマン・ハワード順序数 に到達するであろうと考えられている。新しい研究によれば、竹内・フェファーマン・ブーフホルツ順序数 よりも上か、もしかするとさらに何かしら未定義な順序数崩壊関数 \(\psi\) を用いて \(\psi(I_{I_{\cdot_{\cdot_{\cdot}}}})\) と表される未定義な順序数よりも上になるかもしれないとされている。

しかし、予め断っておいたようにこれは定義が完成した場合の大きさである。現状では\(\varepsilon_0\)以上のオリジナルの定義は不完全である。BEAF の作成者であるBowers以外の何人かが過去に BEAF の代替的定式化を試みているが、いずれもペンテーションレベルまでしか到達していないか、または BEAF の代替的定式化とは名ばかりの原型をとどめていないものである。もちろん今後Bowers以外の誰かが BEAF の代替的な定式化を進めたとしても、それはあくまで第三者による別の表記であるため、BEAF が未完成であるという事実に変わりはない。従ってBowers本人の今後の活躍が期待される。

BEAF は計算可能関数であることが想定されており、その想定に従えば明らかに\(\Sigma(n)\)\(\Xi(n)\)、そしてラヨ関数の方が大きい。一方で定義が不完全であるゆえに計算可能かどうかすら数学的には意味を持たず、中には BEAF が計算不可能であると主張する者もいる。

出典[]

関連項目[]

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