巨大数は、気の遠くなるほど大きな有限の数である。いくつ以上の数字が巨大数になるかという厳密な定義や合意はないが、単に大きな数というよりもずっと大きい、日常生活では使わないような大きさの数がイメージされている。ウィキペディア(巨大数)では、「日常生活において使用される数よりも巨大な数」とされている(2017年8月現在)。「想像力を超える超巨大な数」が巨大数であるとされることもある[1]。無限は巨大数とは別物である。具体的な巨大数は数の一覧を、巨大数に関する参考サイトはリンクを参照。
巨大数を取り扱う理論体系を巨大数論(グーゴロジー; Googology)と言う。グーゴロジーはグーゴルが語源である。巨大数研究者はグーゴロジストという。
巨大数研究の歴史[]
人々は、古くから大きな数に魅了されてきた。
仏教の経典では、大きな数を表す非常にたくさんの表現が用いられている。その中で、恒河沙、阿僧祇、那由他、不可思議、無量大数といった数は、中国や日本の大きな数の表現に取り入れられている。また、不可説不可説転を計算すると\(10^{7\times2^{122}}\)というとてつもなく大きな数になる。西洋では、紀元前3世紀にアルキメデスが『砂粒を数えるもの』の中で\(10^{8\times10^{16}}\)までの数を命名するシステムを考えた。
19世紀から20世紀にかけて、数学の発展とコンピュータの発明により、人々はより大きな数を扱うようになった。数学書の中でグーゴルやグーゴルプレックス、メガなどの概念が紹介され、人々は魅了された。
やがて、プロの数学者が書いた書物を読んだアマチュアの数学愛好家の中に、巨大数の魅力にとりつかれて、独自に拡張した巨大数を考える人達が出てきた。これらの人達が、初期の巨大数研究者である。こうした人達は今でもたくさんいて、持っている数学の知識レベルも様々である。巨大数は、数学の専門的な背景によって3通りに分けることができる。
- プロの数学者が、数学の専門的な問題を解く時に副産物として出てきた巨大数。グラハム数やスキューズ数など。
- プロの数学者が、趣味で開発した巨大数。コンウェイのチェーン表記やスタインハウス・モーザー表記など。
- アマチュアの数学愛好家によって開発された巨大数。BEAFやふぃっしゅ数など。
当初は、巨大数研究者はそれぞれ孤立していたため、様々な考え方がばらばらになっていた。インターネットで、Robert Munafo のLarge Numbersというサイトや、Sbiis Saibian によるOne to Infinity: A Guide to the Finiteというウェブ書籍、そしてこの巨大数研究Wikiの英語版であるGoogology Wiki、日本語では巨大数論などで、巨大数を扱うための手法が体系化され、巨大数論(グーゴロジー)が発展した。巨大数の年表では、その様子を時系列でまとめている。
特に、2002年以降、様々な巨大数研究者達が「どれだけ大きな数を考えることができるか?」という議論を繰り広げてきた。インターネットで巨大数という言葉が使われることになったきっかけは、2002年に巨大数探索スレッドにおいてグラハム数やふぃっしゅ数などの大きさを議論しているときに、その巨大さに圧倒された人たちが「大きな数」という言葉では物足りなく「巨大数」という言葉を使われるようになったことであるとされている[2]。一般に、巨大数研究者達は「無限」「君が考えた大きな数に1を足した数」「100文字で定義出来る最大の数」「想像出来る最大の数」「無量大数の無量大数乗」というような、無限や、定義不能な数、美しくない答え、面白くない答えを避けてきた。巨大数研究者達は、効率的に、より巨大な有限の数字を体系的に定義する方法を考案することに興味を持ち、終わりなき巨大数探索をあきらめることなくひたすら追求を続けた。すなわち、巨大数研究者達の問題意識は「最も簡単な道具を使って考えられる最も大きな数は何か?」ということになる。
数学の研究の中で、巨大数研究は異端である。科学というよりはむしろ芸術に近い。巨大数研究は、非実用的で学問と趣味の間のような微妙な位置づけを保ちながら、これからも続く事でしょう。少なくとも、分野の名前、歴史、そしてコミュニティーがある。