数学において宇宙 (universe) とは議論領域を指す言葉であり、しばしば特定の集合ないしより巨大な構成物を指す。

Wikipedia:ja:宇宙 (数学)Wikipedia:Universe (mathematics)なども参照。

一般名詞としての宇宙、および宇宙論に関する話題は宇宙論の巨大数を参照。

「すべての集合」の集まり

以下では「すべての集合」を例としたクラスを数学的に扱うための手法をいくつか述べる.シュールマン[1]なども参照.

グロタンディーク宇宙

集合論においては、『すべての集合の集合』を筆頭として『(ある性質)を持つ集合すべての集合』を考えることはできない。これらの"集合"は、ラッセルのパラドックスカリーのパラドックス、その他多数の類似のパラドックスを引き起こすためである。しかし、議論のために「集合の全体」など、様々なものの全体という概念が必要になることは多い。これを回避する方法のひとつがグロタンディーク宇宙である。

以下の定義はMac Lane[2]に基づいたものである[注 1]

定義 (グロタンディーク宇宙)
グロタンディーク宇宙 (Grothendieck universe)とは、以下の性質を満たす集合である:
  1. に対して、ならば
  2. に対して、対集合 、順序対 、直積 はすべてに属する。
  3. に対して、冪集合 、和集合 に属する。
  4. (は有限順序数全ての集合。)
  5. が全射的関数でかつであるならば、

この定義により、の要素に対して行われた数学的な操作の大抵は、ふたたびの要素となる。特にである.ここでの要素である集合を「小さい」集合、の部分集合である小さくない集合を「大きい」集合とすることにより、例えば「全ての小さい集合からなる圏」といった数学的構造について考えることが可能になる。しかしは初等同値ではないことに注意されたい。すなわちは異なる構造となる.

に「全ての集合に対してそれを含むグロタンディーク宇宙が存在する」を加えた集合論をタルスキ・グロタンディーク集合論といい,これはに「到達不能基数が非有界に存在する」を加えたものと無矛盾同値である。


真クラスとNBG集合論

「全ての集合」を取り扱う別の方法として、NBGの公理系を採用し、「クラス」を導入することが挙げられる。においては、素朴な「ものの集まり」をクラスと呼び、クラスの要素であるものだけを集合と呼ぶ。すなわち、「クラスが集合である」という文は で定義される命題となる。
集合とクラスの区別がつく代わりに、では「(ある性質)を持つ集合すべてのクラス」が定義できる。特に「すべての集合のクラス」が定義でき、これをで表す。もちろんZFC上での議論と同様に、「(ある性質)を持つクラスすべてのクラス」を考えることはできない。

集合でないクラスを真クラス (proper class)と言う。明らかには真クラスである。上で真クラスは"存在"できず、その要素の条件となる論理式(すなわち、真クラスに対して を満たす論理式「」)としてのみ記述される。
一般に集合論の話をするときはがメタ理論であるため、真クラスはそのような個別の論理式を持った主張であることに注意すること。

真クラスを表現するの論理式をで書いたとき、
は真クラスである」とは「だが,を満たす集合は存在しない」、
「真クラスの要素」とは「を満たす」を意味している。

の保存拡大である、すなわちの論理式(すなわちクラスに対する変数を持たない)に対してが証明可能ならでもが証明可能である。を矛盾を表す論理式とすればこれはの論理式なので、は無矛盾同値である。保存拡大であるという事実は証明論的にはカット除去定理により部分論理式性から従い,モデル理論的にはのモデルを適切にのモデルに拡大できることによる.


真クラスとフェファーマンの

フェファーマンは「全ての集合」を扱う別の方法として、レヴィ・モンタギューの反映原理を元にという公理系を提示した[3]

はSmallnessのSであり,小さい集合全体の集まりを意図している。具体的にはに定数記号を加えて、に以下の公理を加えたものがである。

  1. を含まない論理式に対する、ここで、の相対化、すなわちに現れる量化子全てをに置換したものである。

論理式は無限個あるため、3もまた無限個の公理からなる。このようなはクラスと殆ど同じ役割を果たし、からに対して示せたものはに対しても示せたことになる。すなわちの閉論理式に対し、からが証明可能であることと、からが証明可能であることは同値である。

の保存拡大であり、よって無矛盾同値である。この事実は証明論的にはカット除去定理により部分論理式性、及び証明に現れるの公理は有限個であるから、それに対する反映原理でモデルを取ることで示される。


集合論における宇宙

集合論において宇宙とは、ZFやその他の集合論のモデルを与えるために構成されたものを指すことが多い。


フォン・ノイマン宇宙

フォン・ノイマン宇宙とはZFCで扱うことが出来る全ての集合を漸増的に定義する真クラスである。それは集合ではないが、「全ての集合の集合」とみなすことができる。それは累積階層という、次のように定まる超限列により定義される:

(ここで のべき集合である)

全ての順序数に対してを定めた上で、次のように置く:

これがフォン・ノイマン宇宙である。


構成可能宇宙

構成可能宇宙を定義するために、次のような関係を定義する必要がある:

由来のパラメータを持つ一階論理式で定義されるの部分集合全てを含む集合とする。

由来のパラメータを持つ一階論理式とは、自由変項を用いてと表される一階論理式(記号 等を含む)である。このを形式化するためには論理式をゲーデル数化しなければならないが省略する。

集合が論理式によって定義されるとは、を満たす集合全体の集合であるということである。

与えられたクラスに対し、構成可能閉包 (constructible closure) を以下のように定義することが出来る:

  • を含む最小の推移的クラス(推移的クラスとは、自身の部分クラスのみからなるクラスである)

ここでのときと表し、構成可能集合という。

この構成可能閉包の定義はあまり上手く振る舞わない,特ににおいて一般のは整列順序を持たないかもしれないためとは限らない。


よって以下のに相対化した構成可能宇宙 (constructible universe relative to ) を考えることもある.まずを構造での一階論理式で定義可能なの部分集合全体である。ここでは一変数の関係とする。に相対化した構成可能階層は以下のように超限再帰で定義される。

このようにすればである。

また階層は振る舞いがよくないことから階層というものも考えられている。階層はに相対化した基礎関数閉包を用いて超限再帰で定義される.

  • ただしは極限順序数である.

なる順序数に対してであり,従ってである。

脚注

  1. 例えばブルバキのテキストではωの存在性が課されていない.この定義の場合,遺伝的有限集合の全体もグロタンディーク宇宙の要件を満たす.

参考文献

  1. M.A. Shulman. Set theory for category theory. arXiv preprint arXiv:0810.1279 (2008).
  2. Mac Lane, Saunders (1998). Categories for the Working Mathematician (2nd ed.) Springer. (S.マックレーン. 三好博之, 高木理 (訳) (2012). 圏論の基礎. 丸善出版)
  3. Feferman, Solomon, and G. Kreisel. "Set-theoretical foundations of category theory." Reports of the midwest category seminar III. Springer, Berlin, Heidelberg, 1969. doi:10.1007/BFb0059148
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