不可説不可説転(ふかせつふかせつてん)[1]は仏教の経典である華厳経[2]に出てくる数詞であり、中国の上数と同じように 2 乗すると次の単位になる単位系を使っているため、非常に大きな数である。華厳経の漢訳完本には、全60巻の旧訳(普経)と、全80巻の新訳(唐経)があり、それぞれ数が微妙に異なっている[3]。
高杉親知は、旧訳を元にして不可説不可説転が107×2122 = 1037218383881977644441306597687849648128、つまり10の37澗乗程度であると計算した[4]。すなわち、\(1\underbrace{0000000000\dots\dots\dots\dots\dots0000000000}_{37218383881977644441306597687849648128}\)である。日本では、この旧訳による高杉の計算がネット上で広まって定着し、たとえばウィキペディアの記事(不可説不可説転)ではこの値が「仏典に現れる具体的な数詞としては最大のもの」とされ、新訳については触れられていない(2017年8月10日現在)。
数学者の末綱は、新訳を元に「不可説転転」が 105 × 2120であると計算している[5]。トーマス・クリアリー (Thomas Cleary) が華厳経の新訳を英語に訳し[6]、その訳では unspeakable が 1010 × 2120、square untold が1010 × 2123、となるため、英語圏ではこの新訳による解釈が主流である。ある英語のサイト[7]では、その値が105 × 2123であるという解釈だけでなく、テトレーションを使って10^^(10^(5×2^120))であるという可能性が書かれているが、本当にテトレーションを意味していたのかどうかは疑問である。
例
- (1036)! = 103.55657×1037は、不可説不可説転に近い(とは言っても、その絶対的な大きさの差は極めて大きい)。すなわち、1澗=1036個の物体を順番に並べる並べ方は、不可説不可説転通り程度となる。
- 不可説不可説転程度の大きさの数をコンピュータに記憶するためには、メモリが1.4×1036バイト、すなわち1兆YB(ヨタバイト)程度必要であり、この程度の大きさの数の計算を近似せずに正確にできる日は、当分来そうにない。
- 永遠の努力において、ベントレーが不可説不可説転個のディスクを取り付け終わったときに、彼はまだ5個目のカウンターの作成をはじめたばかりである。
動画
(1) 出典: 無量大数を超えて / 数の単位(命数法)
(2) 出典: 数の単位 不可説不可説転 【2ch】
出典
- ↑ 不可説不可説転 (Wikipedia)
- ↑ 大方広仏華厳経の巻第四十五、阿僧祇品第三十
- ↑ 鈴木真治 (2016)『巨大数』岩波書店
- ↑ 無量大数の彼方へ (高杉親知)
- ↑ 末綱恕一 (1957) 『華厳経の世界』春秋社
- ↑ Cleary, T. (1993) The flower ornament scripture: a translation of the Avatamsaka Sutra. Shambhala, Colorado, USA.
- ↑ [1]