巨大数研究 Wiki
(ブログの記事の作成/更新)
タグ: sourceedit
(ブログの記事の作成/更新)
タグ: sourceedit
91行目: 91行目:
 
* 一番左ではないところにある s(n) 変換が付いた状態の \(f\) もまとめて変換できる
 
* 一番左ではないところにある s(n) 変換が付いた状態の \(f\) もまとめて変換できる
   
という点について自明性に欠けると思います。この規則を満たさず、単に右側に展開していく場合は近似が成立しないことを以下に示します。ここで \(g(x) = 2x = f_1(x), h(x) = 2^x x = f_2(x), i(x) = f_3(x)\) です。
+
という点について自明性に欠けると思います。
  +
  +
この規則を満たさず、単に右側に展開していく場合は近似が成立しないことを以下に示します。ここで \(g(x) = 2x = f_1(x), h(x) = 2^x x = f_2(x), i(x) = f_3(x)\) です。
   
 
\begin{align}
 
\begin{align}

2015年3月21日 (土) 18:51時点における版

先の記事に対し、途中まで訂正を行なった記事に引き続き訂正をしたいところなのですが、まず検証をします。前の訂正記事の最後に「s(n)変換の書き下しにもミスがあります」と述べました。

さて、s(n)変換の定義からです。

\begin{align} s(1)f &:= g; g(x)=f^x(x) \\ s(n)f &:= g; g(x)=[s(n-1)^x]f(x) (n>1) \end{align}

これを順に計算していきます。

\begin{align} s(1)f(x) &= f^x(x) \\ &= x+x \\ &= 2x \end{align}

これが急増加関数の \(f_1(x)\) と等しいことは自明です。次に、\(g(x) = 2x\) とした時、

\begin{align} s(1)^{2}f(x) &= s(1)s(1)f(x) \\ &= s(1)g(x) \\ &= 2^x x \end{align}

となり、これは \(f_2(x)\) と等しいですね。そして \(s(1)^{3}f(x) = f_3(x)\) ということになり、寿司 虚空編にもあったようにこの一般項は出せません。以下同様にしていき \(s(2)f(x) = s(1)^{x}f(x) = f_{\omega}(x)\) となります。ここまでは先の記事でも正しいのですが、問題はここからです。

s(n)変換の記事から式を引用します。

\begin{eqnarray*} s(1)s(2)f(x) & \approx & A(1,1,x) \approx f_{\omega + 1}(x) \\ s(1)^2 s(2)f(x) & \approx & A(1,2,x) \approx f_{\omega + 2}(x) \\ s(1)^n s(2)f(x) & \approx & A(1,n,x) \approx f_{\omega + n}(x) \end{eqnarray*}

まずいきなり \(s(1)s(2)f(x)\) や \(s(1)^n s(2)f(x)\) というものが出てきていますが、これは近似の上で必要だからこのように記述したのではなく、次に引用する式で示されている \(s(2)^2 f(x) = s(1)^x s(2)f(x)\) という計算に基いて出てきています。

\begin{eqnarray*} s(2)^2 f(x) = s(1)^x s(2)f(x) \approx A(1,x,x) = A(2,0,x) \approx f_{\omega \times 2}(x) \end{eqnarray*}

すなわち、\(s(2)^2 f(x) = s(2)(s(2)(f(x))) = s(2)(s(1)^x (f(x)))\) ではないということになります。つまり、s(n) 変換では「\(n > 1\) かつ \(s(n)\) が数え上げられている時、まずひとつを \(s(n - 1)\) を数え上げた形にして一番左に置く」ということになります。

ここで先の記事から急増加関数の書き下しを引用します。

\begin{align} f_{\omega \times 2}(3) =& f_{(\omega + \omega)[3]}(3) \\ =& f_{\omega + 3}(3) \\ =& f_{\omega + 2}^{3}(3) \\ =& f_{\omega + 2}(f_{\omega + 2}(f_{\omega + 2}(3))) \\ =& f_{\omega + 2}(f_{\omega + 2}(f_{\omega + 2}(3))) \\ =& f_{\omega + 2}(f_{\omega + 2}(f_{\omega + 1}^3(3))) \\ =& f_{\omega + 2}(f_{\omega + 2}(f_{\omega + 1}(f_{\omega + 1}(f_{\omega + 1}(3))))) \\ =& f_{\omega + 2}(f_{\omega + 2}(f_{\omega + 1}(f_{\omega + 1}(f_{\omega}^3(3))))) \\ =& f_{\omega + 2}(f_{\omega + 2}(f_{\omega + 1}(f_{\omega + 1}(f_{\omega}(f_{\omega}(f_{\omega}(3))))))) \\ =& f_{\omega + 2}(f_{\omega + 2}(f_{\omega + 1}(f_{\omega + 1}(f_{\omega}(f_{\omega}((2^{402653184})402653184)))))) \\ =& f_{\omega + 2}(f_{\omega + 2}(f_{\omega + 1}(f_{\omega + 1}(f_{\omega}(f_{(2^{402653184})402653184}((2^{402653184})402653184)))))) \\ =& f_{\omega + 2}(f_{\omega + 2}(f_{\omega + 1}(f_{\omega + 1}(f_{\omega}(f_{(2^{402653184})402653184-1}^{(2^{402653184})402653184}((2^{402653184})402653184)))))) \\ & \vdots \\ \end{align}

これを見るとわかりますが、後続順序数を下っていっても、外側にはより大きな後続順序数が数え上げられた形で待ち構えています。すなわち、\(\omega \times 2\) のうち、\(\omega\) を 1 つ分しか Wainer 階層で下っていないため、もう 1 つの \(\omega\) はそれぞれの帰納的な関数の適用にそのまま残っています。

これらを踏まえ、先の記事の間違えていた部分の書き下しをやり直します。ここで、s(n) 変換は「一番左にある s(n) 変換から計算する」「一番左ではないところにある s(n) 変換が付いた状態の \(f\) もまとめて変換できる」という形で計算をしていますので、そこに注目してください。

\begin{array}{l} & f_{\omega \times 2}(3) \\ =& f_{(\omega + \omega)[3]}(3) &= s(2)^{2}f(3) \\ =& f_{\omega + 3}(3) &= s(1)^{3}s(2)f(3) \\ =& f_{\omega + 2}^{3}(3) &= s(1)(s(1)^{2}s(2))f(3) = (s(1)^{2}s(2))^{3}f(3) \\ =& f_{\omega + 2}(f_{\omega + 2}(f_{\omega + 2}(3))) &= (s(1)^{2}s(2))(s(1)^{2}s(2))(s(1)^{2}s(2))f(3) \\ =& f_{\omega + 2}(f_{\omega + 2}(f_{\omega + 1}^3(3))) &= (s(1)s(2))^{3}(s(1)^{2}s(2))(s(1)^{2}s(2))f(3) \\ =& f_{\omega + 2}(f_{\omega + 2}(f_{\omega + 1}(f_{\omega + 1}(f_{\omega + 1}(3))))) &= (s(1)s(2))(s(1)s(2))(s(1)s(2))(s(1)^{2}s(2))(s(1)^{2}s(2))f(3) \\ && \vdots \end{array}

ちょっと横に長すぎるのでここまでにします。以上が s(n)変換の記事にある解説なども交えて自分が解釈したことです。

これであれば対角化の構造が s(n)変換の記事にある式の通りに一致することは説明できますが、流石に最初の定義のみからこれを了解するのはちょっと難があるように思います。この記事における理解で正しい場合、現状の s(n) 変換の定義は

  • \(n > 1\) かつ \(s(n)\) が数え上げられている時、まずひとつを \(s(n - 1)\) を数え上げた形にして一番左に置く
  • 一番左にある s(n) 変換から計算する
  • 一番左ではないところにある s(n) 変換が付いた状態の \(f\) もまとめて変換できる

という点について自明性に欠けると思います。

この規則を満たさず、単に右側に展開していく場合は近似が成立しないことを以下に示します。ここで \(g(x) = 2x = f_1(x), h(x) = 2^x x = f_2(x), i(x) = f_3(x)\) です。

\begin{align} &s(2)^{2}f(3) \\ =& s(2)s(1)^{3}f(3) \\ =& s(2)s(1)^{2}g(3) \\ =& s(2)s(1)^{1}h(3) \\ =& s(2)i(3) \\ &\vdots \end{align}

これでは \(f_{\omega}^{2}(3)\) ですね。

私はこの理解で正しいのかどうか自信が持てませんし、またこれで正しい場合は、もう少し理解しやすい定義に修正すればここで躓く人を減らせるのではないかと思います。とりあえずふぃっしゅっしゅさんの意図がどうであったのか確認するため、この記事を執筆しました。