巨大数研究 Wiki
Advertisement

ジンバブエ・ドルとは、かつてジンバブエ共和国が発行していた通貨。1980年4月18日から2015年6月11日まで法定通貨として有効であった。

概要

ジンバブエ・ドルはジンバブエ独立と共に、1980年4月18日それまで流通していたローデシア・ドルを置き換える形で登場した。しかしながらロバート・ムガベ政権の失策によりハイパーインフレーションが発生し価値が大暴落。2009年4月12日に事実上の廃止状態となった

[1]

。正式に法定通貨としての価値を喪失する廃貨は2015年6月11日に実施され、他国の通貨を暫定的に法定通貨とする措置が実施された[注釈 1][2]。これは2019年6月24日に暫定通貨のRTGSドルに置き換わるまで続けられた[3]

ジンバブエ・ドルのインフレ率は驚異的であったものの、世界最悪のペンゲーには及ばない。歴史上ハイパーインフレーションは何度も起こっているが、ジンバブエ・ドルが価値の非常に低い通貨として有名となったのは、インターネット時代において世界中の人々が物価上昇をリアルタイムで観る事が可能だった点にある。

通貨

ジンバブエ・ドルはインフレ対策としてデノミネーションが3度実施されており、それぞれで新しいジンバブエ・ドルが印刷されている。3回のデノミによって、最初のジンバブエ・ドルの価値は \(10^{-25}\) にまで低下している。2015年のジンバブエ・ドルの廃止時には、銀行口座預金を3京5000兆ジンバブエ・ドル \((3.5\times10^{16})\) あたり1米ドルで交換していた[注釈 2][4]。1980年のジンバブエ・ドル開始時には1米ドルが0.68ジンバブエ・ドルと等価であった為、ジンバブエ・ドルの方が価値が高かった[注釈 3][5]。1980年から2015年の35年間で、米ドル換算でジンバブエ・ドルは \(1.94\times10^{-42}\) まで価値が低下した事を意味する。1980年の2ジンバブエ・ドル紙幣[注釈 4]を、2015年の1米ドルと同じ価値の分だけ積み上げるならば、紙幣は\(4.76\times10^{41}\)枚必要である。紙幣の厚さを0.1mmとするならば、1枚ずつ積み上げるとその厚さは\(5.03\times10^{21}\)光年となり、観測可能な宇宙の直径の540億倍となる。

2回目のデノミの後に発行された3番目のジンバブエ・ドルにおいては、最大で100兆ジンバブエ・ドル \((10^{14})\) 紙幣が発行されている。世界で最も高額な額面を持つ通貨は10ペンゲー \((10^{21})\) 紙幣であるが、これは省略表記で書かれている。これに対し100兆ジンバブエドルは額面を省略せずに100 000 000 000 000と書いており、省略されていない物では世界で最も高額な額面の紙幣となっている[6]

インフレ率

ジンバブエ・ドルのインフレ率は、公式のレートはハイパーインフレの最中で更新が停止してほとんど信頼されていない為、外部からの推定によるものが使用されている[7]

最大のインフレ率を記録していたのは2008年11月中旬であると推定されているが、インフレ率には僅かな差がある。ある資料では、インフレ率を1年あたり\(6.5\times10^{108}\%\)と推定している[8]。別の資料では、1ヵ月あたり\(7.96\times10^{8}\%\)、1日あたり\(98.0\%\)としており、これを年率換算すると\(1.97\times10^{108}\%\)となる[9]。いずれにしてもこのインフレ率は、ほぼ24時間ごとに物価が2倍になるという脅威的な状況である[注釈 5]

注釈

  1. 法定通貨と認定されたのは米ドル、ユーロ、スターリング・ポンド、南アフリカ・ランド、ボツワナ・プラ、中国人民元、インド・ルピー、オーストラリア・ドル、日本円の9種類であるが、事実上流通していたのは米ドルと南アフリカ・ランドであった。
  2. ただし、17京5000兆ジンバブエ・ドル以下の口座は一律5米ドルで交換された
  3. ただし、ジンバブエはこの時すでにインフレをしていた為実態を反映したレートではなく、実質的な価値は米ドルよりずっと低かったと見られている。
  4. 最初のジンバブエ・ドルの紙幣で最小の単位は2ジンバブエ・ドル紙幣である。
  5. 前者の場合は24時間14分ごとに、後者の場合は24時間21分ごとに物価が2倍となる。

出典

  1. Bryan Taylor. "The Death of the Zimbabwe Dollar." Global Financial Data. (Internet Archive Wayback Machine)
  2. Brian Hungwe. (Feb 6, 2014) "Zimbabwe’s multi-currency confusion." BBC News.
  3. Chris Muronzi. (Jul 4, 2019) "Hyperinflation trauma: Zimbabweans' uneasy new dollar." Al Jazeera.
  4. Godfrey Marawanyika & Paul Wallace. (Jun 11, 2015) "175 Quadrillion Zimbabwean Dollars Are Now Worth $5." Bloomberg Business.
  5. "Zimbabwe Bank Notes."
  6. "Highest denomination banknote." Guinness World Records.
  7. Steve H. Hanke & Alex Kwok. (2009) "On the Measurement of Zimbabwe's Hyperinflation." Cato Institute Journal. 29 (2), 353-364.
  8. The New Humanitarian. (Jan 21, 2019) "Inflation at 6.5 quindecillion novemdecillion percent."
  9. Steve H. Hanke. (Jun 25, 2008) "R.I.P. Zimbabwe Dollar." Cato Lnstitute.

関連項目

Advertisement